「海竜の里」を魚で町おこし
−女性部が取り組む地産地消−

いわき市漁業協同組合女性部久之浜支部  部長 江川啓子

1. 地域と漁業の概要

福島県いわき市は、浜通り南部に位置する、温暖な気候に恵まれた地域である。 太平洋岸に60qに及ぶ海岸線と9つの港があり、秋にはサンマ、 今の季節はアンコウやベニズワイガニの水揚げで市場が賑わうなど、漁業の盛んな地域でもある。 また、いわき市は、平成13年10月1日にメヒカリ(アオメエソ)を市の魚に制定、 地域全体で水産業の振興に取り組んでいる。いわき市の漁業は古くから遠洋漁業を中心に発展してきたが、 近年の国際規制により、漁業の中心が、遠洋漁業から沿岸漁業に移り変わってきた。 平成12年には、市内の沿岸7漁協が基盤強化のため、合併し、いわき市漁協が設立された。 平成16年現在、組合員553名、漁船数485隻となっている

当グループが所属する久之浜支所は、いわき市の最北部、フタバスズキリュウや琥珀で知られる、 久之浜・大久地区に位置している。支所における正組合員は95名、漁船数は85隻で、 主な漁業は、沖合底曳き船8隻、小型底曳き船6隻のほか、小型船による船曳網、 かご、固定式刺し網などとなっている。

2.活動グループの組織と運営

グループは昭和24年に発足した久之浜漁協婦人部をスタートとし、平成12年の漁協合併に伴い、 いわき市漁協婦人部久之浜支部、さらに平成15年にいわき市漁協女性部久之浜支部と名称を変え、 現在に至っている。構成員80名の中には、漁業関係者のほか、仲買や水産加工業の関係者も含まれる。

地域活動に係る事業内容としては、各支所女性部との交流会および研修会、イベントの参加、 魚料理講習会、記念植樹、花壇清掃、視察などがあるが、活動資金の大半がイベントの収益と助成金であり、 また、平成15年度収支では赤字になるなど、グループ活動も限られたものとなっているのが現状である。

3.活動課題選定の動機

グループでは、魚食普及の取り組みとして、イベントへの出店や魚料理講習会により久之浜産魚介類を紹介しているが、 これまでは、どうしても単発で終わってしまい、発展性、継続性が得られなかった

このため、グループ活動をどのように発展させ、魚食普及に努めるか、さらに、 これをどのように活動資金源に繋げるかを検討するため、 今回、これまでの取り組みを振り返り、今後の課題を整理することとした。

4. 実践活動の状況及び効果

ここでは、グループが平成15年度から今年度にかけて行った、主な取り組みを紹介する。 ここから、今後の活動へのヒントを得る。

(1) テレビ東京「TVチャンピオン第9回魚通選手権」収録への協力

平成15年10月13日、久之浜魚市場において同番組の収録が行われ(放送は11月13日)、 グループからも地魚料理を二品提供し、これが出場者への問題となった。

「(ダボ汁の中に入っている)このツミレの魚は何?(答:ギス)」

「このタタキの魚は何?(答:サブロウ)」

の二題が出題されたが、いずれも、知名度が低い魚ということで、問題になったようである。

(2)「おらが浜自慢料理発表会」への出品

「福島県おらが浜自慢料理」に認定された「ニクモチの南蛮漬け」、「ダボ汁」、 「ホッキご飯」を、平成16年1月22日、福島市で開催された発表会に出品した。 この時の一般消費者の関心の高さに自信がつき、その後のグループ活動にも弾みがついた

(3) 新潟県能生町漁協への視察

平成16年7月26日、総勢33名で、同漁協、加工場、および直売所の視察を行った。 ここで水揚げされるベニズワイガニは、ゆでガニ用とむき身加工用に分けられる。

ゆでガニは、カニカゴ船が各々で直営する直売所で販売し、むき身加工は、漁協が水揚げされたカニを購入し、 加工場でむき身に加工して、主にインターネットにより販売している。

直売所は、同漁協の女性部員が中心となって運営しており、また、各々、店を開設しているということから、 競争意識があるとのこと。また、加工場では、カニの禁漁期の1〜2月には幻魚(ノロゲンゲ)の干物をつくり販売し、施設の周年稼働を行っているとのこと。

(4) イベントへの出店

平成16年10月17日に開催された「第4回海竜の里久之浜漁港まつり」への出店は、 グループ活動のなかでも、大きな収益が得られる事業のひとつとなっている。 収益が得られると言っても、値段は安く設定しており、今回、販売したメニューは、 ほっきカレー300円、ニクモチの南蛮漬け150円、サケ味噌漬け100円などである。 また、平成16年12月4日に同市四倉町にて開催された「JAまつり2004」へは、今回が初めての出店であった。 天日干しのアジ、ニクモチの干物や、イカ塩辛、カスベのマリネなどを、150〜300円と、 いずれも手頃な値段で販売した。また、店先では、干物を炭火で焼き、その場で来場者に試食してもらった。 いずれにおいても、手作りの加工品は好評で、昼過ぎに完売となる程であった。

(5)「おじゃまします魚市場」への参画

平成16年11月4〜5日、9〜10日の2回、県主催による漁業関係者と消費者団体との交流 「おじゃまします魚市場」が行われ、グループでも、一日目の料理講習会への講師派遣、 二日目の久之浜魚市場での意見交換で、消費者との交流を図った。

料理講習会ではニクモチの南蛮漬け、アンコウの共酢合え、サケのホイル焼きなどを紹介、 また、予定外のアンコウの吊し切りを実演し、参加者の好評を得た。意見交換の場でも、試食用としてダボ汁、サケのフライ、イクラ丼を振る舞った。

5. 波及効果

「おじゃまします魚市場」では、食材の宅配や、料理講習会の講師派遣といった依頼、 JA女性部とのタイアップの話が参加者から寄せられ、まずは魚食普及の効果はあったものと思われる。 グループとしても、宅配を行ったり、料理講習会の約束を取り付けるなど、要望に対して速やかな対応を行っているが、 さらにこの取り組みを発展させ、継続できるよう検討していきたい。

また、イベントへの出店では、魚介類やその加工品を販売し、現金に換えるという事が、 いかに重要であるかを改めて強く感じた。 市場で魚が売れない、安いという現状を愚痴るより、グループで加工して販売すれば、 付加価値は得られるのである。このためグループでは、街内に近く、 現在、遊休施設となっている旧漁協施設を利用した魚介類などの直売所開設について、 漁協と協議しているところである。

6. 今後の課題

このように、波及効果として新たにスタートしているものもあるが、 これまでの取り組みから次のキーワードを挙げ、今後の課題を整理してみたい。

(1) 知名度の低い魚

知名度が低いという事は、言い換えれば、地域性があって珍しいという事である。 これまで、流通に乗りにくく、単価が低く抑えられていたこういう魚介類を、 久之浜の特産としてPRすることで、消費者のニーズが高まるものと思われる。

(2) 広報

テレビ番組収録への協力や、「おらが浜自慢料理」の認定などは、費用を掛けずに宣伝ができる有効な手段である。しかも、第三者による広報は、 消費者にとって中立性が感じられるせいか、自ら行う広告より信頼性が得られ宣伝効果も高いという。

(3) 競争意識

直売所開設に際しては、船ごとに販売し、売上げの一部が部員個人に渡されるようにすることを考えている。 これにより、グループ内で、いい意味での競争が生まれ、販売に対する意識が高まり、 品質の向上や、工夫が期待できる。

(4) 販売するということ

これまで、市場で売れなかった割れホッキやサケガラは、近所や知り合いに配っていたため、 地元では、魚介類は貰うのが当然となっていた。今後は、このような魚介類は加工するなどして付加価値を高め、 そして、必ず値段を付けて売るという事が必要である

(5) 消費者ネットワーク

「おじゃまします魚市場」での消費者との交流は有意義であったが、その場限りにせず、宅配の取り組みや、 魚料理講習会の講師派遣などにより、今後もアプローチを図っていきたい。

「おらが浜自慢料理発表会」会場風景 「おじゃまします魚市場」料理講習会あんこうの吊し切り実演 「おじゃまします魚市場」料理講習会試食風景
「おらが浜自慢料理発表会」
会場風景
「おじゃまします魚市場」
料理講習会
あんこうの吊し切り実演
「おじゃまします魚市場」
料理講習会 試食風景


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