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最終更新 平成16年11月2日 |
睡眠はどこまで研究されたか
◆睡眠は百薬の長?
私たちが生きていくうえで、睡眠はとても重要です。疲れたとき、いやなことがあったとき、ちょっと体調を崩したとき、気持ちが落ち込んだり不安定なとき、----このようなときに、一晩眠るとすっかり元気になっていたりします。もちろん、睡眠だけで全てが解決するわけではありませんが、睡眠ほどの効果を持つ薬はないといえます。睡眠は心の健康の基本です。
◆睡眠と記憶
睡眠の役割として、最近、特に注目されているのが「記憶の固定」です。私たちの記憶は、大脳皮質に蓄えられます。しかし、蓄えても、どこにしまっておいたかわからなくなってしまうと、せっかく記憶してもそれを使うことができません。そこで、脳のなかの海馬というところで、記憶を管理しています。この、海馬と大脳皮質のやりとりが、睡眠中に行われています。以前は、夢を見る睡眠(レム睡眠と言います)のときに、この記憶の固定が行われると考えられていましたが、最近の研究では、夢も見ないでぐっすり眠っているときも、記憶の固定が行われていることがわかってきました1)。
◆適度な睡眠時間とは?
ところで、睡眠も、とり過ぎるとかえってよくないこともあります。睡眠時間と死亡率の関係を調べた研究があります。この研究では、1日に6〜7時間の睡眠をとっている人が最も死亡率が低く、8,9時間以上寝る人は死亡率が高くなります。一方、6時間以下の場合は、6〜7時間の睡眠の場合とそれほど違いがありません。睡眠薬などを使う場合については、まだ十分にわかっていないようですが、一般的には、少しの不眠であれば、あまり心配ないということは言えそうです2)。
◆睡眠時間が短い人に
睡眠時間が短くてもよいといっても、例外はあります。まず、うつ病の場合です。うつ病では、多くの場合、睡眠時間が短くなります。それだけではなく、元気がなくなってしまい、仕事に差し支えがでたり、自殺の率も高くなります。睡眠障害の治療だけでは病気が治りませんので、きちんとうつ病の治療をしなければなりません。そのほか、寝るときになると足がむずむずしてしまうという「むずむず脚症候群」という病気もあります。また、仕事が忙しくて眠る暇もないという場合も、注意が必要です。過労の場合、うつ病になったり、脳卒中や心臓発作を起こしやすくなったりします。ですから、睡眠時間が短くても平気というのは、普通に寝ていて睡眠時間が短い場合のことを言います。こうした場合は、無理に睡眠薬を使う必要はないということです。
◆睡眠時間が長い人に
睡眠時間が長い場合、死亡率が高くなります。この結果が出た理由はよくわかっていませんが、一部には、やはり病気が関係しているのではないかと考えられます。その一つが睡眠時無呼吸症候群です。この病気は、寝ている間に短時間、呼吸が止まってしまう病気です。そのために眠りが浅くなり、長い時間眠っても疲れがとれず、結果として過眠になってしまいます。この病気では、呼吸が止まってしまうために心臓などに負担がかかり、死亡率が高くなります。少し太っている人でいびきがひどい人に多いのですが、太っていない人やいびきがない人でも、この病気を持っていることがありますので、注意が必要です。そのほか、ナルコレプシーという過眠の病気や、睡眠相後退症候群という睡眠の時間帯がずれてしまう病気もあり、注意が必要です。
◆睡眠を通して生活を見直そう
最近は睡眠も商品化されて、安眠のグッズや、見たい夢をみるための装置など、さまざまなものが売り出されています。しかし、考えてみると、睡眠というのは、昼と夜の変化をうまく取り入れた機能であり、人間が進化の過程で獲得してきたものです。不眠の多くは、生活様式の変化が影響していると考えられます。朝早くおきて、しっかりと太陽の光を浴びることが夜にぐっすり眠るのに役立つと言われている3)ほか、日没後、遅くまで明るい光を浴びていると体内時計が狂ってしまうということも言われています4)。いずれも生活習慣の問題です。安易に商品に走るよりも、まずは自分の生活を見直すことから始めましょう。
睡眠に問題があるときは、@病気かどうか確かめる、A生活を見直す
◆参考文献
1) Power AE: Slow-wave sleep, acetylcholine, and memory consolidation. PNAS 101:1795-1796, 2004
2) Kripke DF et al: Mortality associated with sleep duration and insomnia. Arch Gen Psychiatry 59: 131-136, 2002
3)厚生労働省:健康づくりのための睡眠指針検討会報告書, 2003
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/03/s0331-3.html
4) Doi M et al: light-induced phase-delay of the chicken pineal circadian clock is associated with the induction of cE4bp4, a potential transcriptional repressor of cPer2 gene. PNAS 98: 8089-8094, 2001