精神保健福祉瓦版ニュース No.175

2012.2.28      福島県精神保健福祉センター

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こころの健康相談ダイヤル 0570-064-556全国統一ナビダイヤル)

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この「精神保健福祉瓦版ニュース」は、精神保健福祉についての情報及び市町村や社会復帰施設等の活動内容などを紹介するため、毎月1回発行しています。

---- 今 月 の 内 容 ----

活動報告−相双保健福祉事務所「心のケア活動」の今    相双保健福祉事務所保健福祉課障がい者支援チーム

コラム−「震災・原発事故を乗り越えるために――『健康』を通じて復興を!」

     〜3月は「自殺予防強化月間(福島県)」「自殺対策強化月間(国)」です〜

                                精神保健福祉センター所長  畑 哲信

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活動報告     相双保健福祉事務所「心のケア活動」の

相双保健福祉事務所 保健福祉課 障がい者支援チーム

<精神科医療の現状>

 震災後、管内全ての精神科病院は閉鎖されましたが、福島第一原子力発電所から20キロ圏外の南相馬市原町区にある精神科病院は、外来診療は週4日となり、軽症者限定で入院機能も再開され、診療所3か所は、震災直後から診療を続けています。

 また、新たに相馬市に診療所が開設され、平成24年1月10日から診療をスタートしています。一方、福島第一原子力発電所から20キロ圏内にある3病院については、今後の見通しが全くたたない状況です。

 

<心のケア活動>

 医療、福祉サービスの充実と円滑な連携を図れるようなシステムを構築するための拠点としてNPO法人が新たに「こころのケアセンター」を設立。現在、共同で心のケア活動を実施しています。

 

◆高齢者等の交流の場・相談窓口の提供

 仮設住宅の集会場において、血圧測定、ミニ健康講話、軽い運動、折り紙等を行い、お茶を飲みながら談話も交え、個別相談に応じています。

開催当初は、家族を失った悲しみ、今まで体験したことのない津波のこと、運が良かった自分、不幸だった知人等の話が途切れることはありませんでしたが、今では、前を向いて生きていこうという話が中心になってきました。

 

◆心の健康を保つための機会の提供・相談窓口の提供

 相馬市保健センターにおいて、毎週土曜日10時30分〜12時まで「ちょっとここで一休の会」を開催しています。お茶を準備して、個別相談、リラクゼーション、趣味講座(手芸・ヨーガ・アロマ等)、軽い運動、子供の遊び相手を行っています。スタッフは、福島県立医科大学大学院看護学研究科精神科看護学領域の修了生の方が中心となり、多くのボランティアの協力で運営されています。子供から高齢者、障がいのある方等様々な方が気軽に来所され、抱えている問題があれば、対応できる適切な部門に繋がれ、問題の早期発見や解決に貢献しています。また、障がい者の憩いの場としても利用されています。

 

◆職員に対する心のケア

◇消防署職員

 福島県立医科大学付属病院救急科からの依頼を受け、消防署職員全員に対し一人1時間の設定で、県内外の医師や臨床心理士等のボランティアが中心となり、心の相談を実施していただきました。心の相談を受けた消防士の方から「職場や家庭でも話せないことを、じっくり聞いてもらい、とてもよかった」等との声が聞かれたとのことでした。現在は、相談結果を効果的に事業所に返すためのまとめを行っていただいています。

◇県立高校の教員

 学校長からの依頼を受け、県内外の医師や臨床心理士等のボランティアが中心となり、教員全員に心の健診や希望時にカウンセリングを実施していただきました。現在は、健診結果をまとめ、各学校に返すためのまとめを行っていただいています。養護教諭より、「自分自身も話を聞いてもらう機会を得て楽になった。今後もぜひ継続してほしい」との意見がありました。

◇特別養護老人ホームの職員

 施設長からの依頼を受け、全職員を対象に、県内外の医師や臨床心理士等のボランティアが中心となり、心の相談を実施していただきました。

◇市町村職員

 質問紙によるスクリーニングを全員に実施し、その結果によりカウンセリングを行いました。また、別の市町村では、保健センターの職員から依頼のあった方に県内外の医師や臨床心理士等のボランティアが中心となり、心理相談を実施していただきました。今後も必要に応じて、相談活動を展開していく予定です。

 

◆未治療者・治療中断者に対する治療導入活動への支援

 家族、近隣の住民、各自治体から相談のあった、精神科医療に関する未治療者及び治療中断者への対応を行っています。

 震災当初は、通院していた医療機関が無くなってしまった方や、避難所生活のストレス等で体調を崩し、入院を余儀なくされた方の支援が続きましたが、現在は、震災当初は何ともなかったが、今になり「物事に集中できない」「急いで対応しなければならないことがあっても行動できない」「仕事も無いしこれからどうしていいかわからない」と朝から飲酒する等のこころの悲鳴が多く聞かれるようになってきました。仮設住宅に訪問すると、以前は「関係ありません」の言葉が返ってきましたが、今では、「誰か来てくれないかと待っていました」との声も聞かれ、長期にわたるケアの必要性を実感しています。

 

◆仮設住宅への支援方法に関するDVDの作成

 NPO法人が中心となって、仮設住宅への全戸訪問の実施方法について、留意点等を具体的に示して、ボランティア等の支援者が、円滑に活動することをサポートするDVDを作成しています。

 

<今後に向けて・・・>

 震災からまもなく一年になろうとしています。

 当地域は地震と大津波により千人を超える住民が亡くなったほか、住宅や公共施設の全半壊、交通基盤の分断等甚大な人的、物的被害が生じました。それに加え、東京電力福島第一原子力発電所の事故により、多くの住民が県内外に避難し、自治体機能も移転を余儀なくされている町村もあるなど深刻な事態が続いています。

 特に、原子力の問題は深刻で、放射線量が高い地域で生きること、避難して生活が崩壊すること等、先が見えずどうしていいのかわからないで苦しんでいるGUM12_CL15169という状況が伺えます。          

 こころの叫びをキャッチできるような、きめ細かな支援ができればと思っています。

(報告者:主任保健技師 木幡智子)

 

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コラム「震災・原発事故を乗り越えるために――『健康』を通じて復興を!」

     〜3月は「自殺予防強化月間(福島県)」「自殺対策強化月間(国)」です〜

福島県精神保健福祉センター 所長   畑 哲信

1.自殺予防を越えて −『健康』の優先順位を高める

 自殺予防は「うつ病など心の不調に早く気づき、相談や治療などの対処をする」ということを基本として進められてきました。しかし、自殺予防は、心の不調を抱えた人だけの問題ではなく、私たちみんなが心がけることが必要です。私たちみんなが取り組むことができる自殺予防・・そのポイントが「『健康』の優先順位を高める」ということです。

 

2.心と体 − 心の健康は体の健康があってこそ

 心の健康は体の健康の上にあります。ですから心の健康を心掛ける上においても、適度な運動、休養と睡眠といった体のケアも重要です。ストレス解消と称して、お酒を飲み過ぎる、なんとなくうだうだしてテレビを見たりゲームにはまったりして夜更かししてしまう、といったことはかえって健康を損ねて、結果としてストレスを増やしてしまいます。

−生活の中で「健康」を優先させる−

例1.「ちょっと飲みすぎたかな・・でも、コップにお酒が少し残っている」といった場面を想像してみてください。少しだから最後まで飲みほしてしまうという方法もありますが、体のことを考えれば捨ててしまうという方法もあります。「もったいない」と思うかもしれませんが、健康のために投資すると考えれば安いものだと思います。

例2.「眠いんだけれど読んでいる本がもう少しできりのいいところまでたどりつく」という場合・・こういったときも「健康のために今日はここで切り上げて寝よう」と考える・・こんなふうに、普段の生活の中で、いつもより健康をこころがけて行動することが大切です。

 

3.健康のイメージを変える − 健康であれば笑顔になれる場があるもの

 皆さんは健康というとどういうイメージを持つでしょうか? 「病気ではない状態」?・・・でも、病気にならないように気にしすぎたり、検査の数字にこだわりすぎると、かえって気がめいってしまいます。今、福島県では放射能に対する不安があり、「放射能の影響がないことを確かめるためにも健康管理を」というように言われていますが、これも同じリスクを抱えています。

 もっと健康を実感できるようなイメージを持つことが大切です。それが「健康であれば笑顔になれるもの」・・という心の健康を含めたイメージです。たとえば、「最近イライラする」「笑顔が少なくなってしまった」というと、心がけや性格の問題と考えられてしまうことがありますが、そうではなく心の健康が損なわれかけている状態と考えるべきです。心の不調のサインは「疲れが取れない」とか「気持ちが落ち込む」といったものだけではないのです。

−心の不調に気付くポイント:「笑顔とご無沙汰していませんか?」−

例1.「休みの日、いろいろやらなきゃいけないことがあるんだけれど、ついゴロゴロしてしまう」ということはないでしょうか? そんなときは、「ああ、またさぼってしまった」と思ってしまいます。そう考えてしまうと、「疲れが取れない」とか「気持ちが落ち込む」といった心の不調のサインが出ていても、見過ごしてしまいかねません。責任感が強く、自分を責めてしまう傾向のある人であればなおさらでしょう。

例2.「またあの上司と顔を合わせないといけないと考えると仕事に行きたくない」と感じることはありませんか? そんなときは、ストレスがたまっていると実感するかもしれませんが、「上司をなんとかしてほしい」という気持ちが強いと、自分の体調を整えよう、という方向にはなかなか考えが進みません。こんなときも「笑顔とご無沙汰しているのは心の健康を損ねているサイン」ととらえて、自分の体調を見直すことが大切です。(もちろん上司の責任も重要ですが)

 

4.健康について優先順位を高める

−あなたは自分の健康をどのくらい優先させることができますか?−

こんな場面を想像してください。「疲れたから早く帰ろうかと思う。でも周りを見ると、みんな忙しくしている」・・そんなとき、どうでしょう? そこで帰ってしまったら、なんだか恨まれそうに感じます。確かに、残された方の立場になると、忙しいときに早く帰られると恨んでしまうかもしれません。でも、もし、そうやって無理をして自殺してしまったらどうでしょう? 「そんなに悩んでいたのなら言ってくれればよかったのに」と思うのではないでしょうか? しかし追い詰められていればいるほど、そんなことを言えるものではありません。

 疲れてしまって「帰って休みたい」というときは、気兼ねしないで帰りたいものです。それができるためには、ときには仕事よりも健康を優先させるという気持ちをみんなが共有していることが必要です。自殺ということになれば、「命」の問題ですので「言ってくれれば・・」と考えたくなりますが、それは後の祭り。自殺してしまってからようやく気付くということでは遅いのです。これは職場の同僚や上司が心がけるだけでなく、企業の責任でもあります。

 

5.原発事故と「健康の優先順位」

 福島では、震災・津波に加えて、原発事故とその風評被害に見舞われています。風評被害については、放射能の影響がはっきり見えないために疑心暗鬼を生んでいる状態と考えられます。こんなときに、福島県民の健康状態が悪い、ということになれば、風評被害では済まされず、「やっぱり放射能は怖い」と、ますます不安をあおることになります。だから、風評被害を解消するためにも、私たちが健康であることを示すことが大切です。「健康に対する不安があるから健康に心がけることが大切」というだけではなく、むしろ、「健康維持に取り組むことで、風評被害を解消し、福島の復興を助ける」といったふうに積極的な意味を考えて取り組むべきだと思います。

 昨年、同じ被災県である岩手県、宮城県では、それぞれ14%22%と大幅に自殺者が減りました。福島県での減少幅はそれと比べて少なかったのですが、今後、私たちが、さらなる自殺者減少として健康を示すことができれば、風評被害を解消する力になるでしょう。そう考えると、健康を優先させることは、企業にとっても大きな利益になるのではないでしょうか。

 

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