| 2012年1月27日発行 |
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| <No.204> |
| ◇ うつくしま労委メールマガジン ◇ |
| 発行:福島県労働委員会 |
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◇みなさま、こんにちは。第204号をお届けします。
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| ◆目 次◆ |
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1.委員リレー・エッセー
「国破れて山河なし」 福島県労働委員会公益委員 新開 文雄
2.労働トピック
「心理的負荷による精神障害の労災認定基準について」
3.裁判例紹介
「JAL労組ほか(プライバシー侵害)事件」
(東京地裁 平成22年10月28日判決)
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| 1.委員リレー・エッセー |
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「国破れて山河なし」
福島県労働委員会公益委員 新開 文雄
1 唐の代表的な詩人である杜甫は、「国破れて山河あり、城春にして草木深
し。時に感じては花にも涙を濺ぎ、別れを恨んで鳥にも心を驚かす」と詠ん
だ。この詩は次のように解釈されている(松枝茂夫編『中国名詞選』(中)
岩波文庫)。国都は、破壊しつくされて、昔の姿をとどめているのは山河だ
けだ。城内にも春がめぐってきて、いまや草木がこんもりと生い茂っている。
この先ゆき多難な時局を思うと、美しい花を見ても涙がこぼれるし親しい人
々との別れを嘆いては、鳥の声にも胸さわぎがする。
2 私の生まれ育った南相馬市の実家は、福島第1原発から約17.5キロメ
ートルの地点にあり、今回の原発騒動により警戒区域に指定され避難の対象
地域となっている。そのため、中学校卒業後地元で生活していた中学時代の
同級生も避難を余儀なくされている。その中学時代の同級生から、それぞれ
の現在の状況を綴った「心ひとつに」という文集が送られてきた。この文集
には、「まけるな」、「がんばろう」等と気持ちを鼓舞する言葉が書かれて
いる。しかし、心の絆は強くできても、地域でいつも顔を合わせることによ
って築き上げた地縁等は完全に破壊されている。例えば、葬式があっても避
難先が不明なことから連絡できなかったり、或いは交通手段が寸断されてい
ることから出席できなかったりという状態である。このような地縁等を含む
共同体の絆は、生活していく上で最も大切なものであるにもかかわらず、破
壊されても被害賠償の対象になっていない。また、住所をみると、北海道、
茨城県、神奈川県、愛知県、福井県等と避難先の道県名が書かれており、良
くこんなところに行ったなと気持ちを複雑にさせる。これらの同級生の帰還
の目途はたっていない。
3 政府は、平成23年12月16日、「原子炉が冷温停止状態に達し、発電
所の事故そのものが収束に至った」と宣言した。しかし、この宣言により何
かが変わった訳ではなく、宣言後もコメ、柿、きのこ等の出荷停止が続いて
おり、最近は、このような食物だけでなく、汚染砕石まで発覚し、収束どこ
ろか風評被害を含めて生活状況はより悪化している。また、除染も部分的で
ありその効果も実証されていない。これでは、自宅に帰還し生活することは
不可能である。
4 ふるさとは、放射線という目に見えないものにより完全に破壊しつくされ
ている。草木は生い茂り、山河はあってもその意味をなしていないのである。
現在の私にとってのふるさとは、杜甫よりも悲しく「国破れて山河なし」で
ある。 |
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2.労働トピック
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「心理的負荷による精神障害の労災認定基準について」
厚生労働省は、新たに「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を定め、
平成23年12月26日付けで都道府県労働局長に通知しました(基発1226
第1号)。
心理的負荷による精神障害の労災認定に関する業務上外の判断は、これまで、
平成11年9月の労働基準局長通達「心理的負荷による精神障害等に係る業務
上外の判断指針」(基発第544号)に基づいて行われていました。しかし、
今回の通知の施行に伴い、従来の判断指針が廃止され、新たな基準で判断され
ることとなりました。
近年精神障害の労災請求件数が大幅に増加し、労災認定の審査に平均約8.6
か月を要していることから、審査の迅速化や効率化を図るため、厚生労働省は、
平成22年10月から、医学・法学の専門家による「精神障害の労災認定の基
準に関する専門検討会」を10回にわたり開催しました。そして、平成23年
11月に「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」(以下「報
告書」という。)を取りまとめました。
今回の通知は、この報告書の内容を踏まえて出されたもので、主な変更点は
次のとおりです。
(1)業務上のストレスが、強・中・弱である具体例を示すなど、分かりやす
い「心理的負荷評価表」を定めた。
(2)心理的負荷となる出来事の中で、いじめやセクシュアルハラスメントの
ように長期間出来事が繰り返されるものについて、発病前6か月以内の期
間にも継続しているときは、その出来事が開始した時からのすべての行為
を評価の対象とすることにした。
(3)心理的負荷による精神障害等の業務上外の具体的検討に当たっては、必
ず精神科医で構成された専門部会の意見を求めることとされていたが、自
殺など、判断が難しい事案に限定した。
厚生労働省は、今後はこの基準に基づいて審査の迅速化を図り、精神障害の
労災請求事案について6か月以内の決定を目指すこと、分かりやすくなった新
基準を周知することにより、業務によって精神障害を発病した人の認定の促進
も図っていくこととしています。
なお詳しくは、厚生労働省の以下のホームページをご覧ください。
〇報道発表資料 (2011年12月26日)
「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を策定」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj.html
〇心理的負荷による精神障害の認定基準について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z3zj-att/2r9852000001
z43h.pdf
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| 3.裁判例紹介 |
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JAL労組ほか(プライバシー侵害)事件
(東京地裁 平成22年10月28日判決)
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○ 労働組合が乗務員の個人情報を収集、管理及び使用したことについて、乗
務員の人格的自律ないし私生活上の平穏を害する態様でなされたとして、プ
ライバシー侵害による不法行為の成立を認めた事案。
【事件の概要】
定期航空運送事業等を行う株式会社Y1には、その社員等で組織する労働組
合が複数存在し、その中にA組合及びY2組合があった。A組合はY1の客室
乗務員で組織されており、Y2組合客乗支部(以下「Y2支部」という。)は、
昭和50年にA組合から脱退した客室乗務員がY2組合に加入して組織された
ものであった。
Y2支部は、平成元年頃からA組合が発行している組合ニュースやY1から
公式に提供されていた配置表を基にして、A組合の執行部経験者リスト及び客
室乗務員リストを作成するようになり、平成8年頃には、全客室乗務員約
5,500名に係る入手済の情報に、Y1から公式に提供された情報を追加し
た情報を電子データ化し、Y2組合独自の情報を加えて35項目程度の電子フ
ァイル(以下「本件ファイル」という。)を作成したが、本件ファイルの作成
については、被記録者には秘匿していた。
その後も、Y1から公式に提供された情報や、Y2支部の元役員であるY1
の管理職から入手した情報を本件ファイルに追加し、その結果、平成19年頃
には、本件ファイルには退職者を含む9,862名に上る客室乗務員の個人情
報等が記録され、その情報項目は158項目になった。
平成19年2月、週刊誌の記者がY2組合に対して取材をした際、平成14
年度時点のものと推定される本件ファイルの内容が示されたことにより、本件
ファイルの内容が外部に漏洩していたことが発覚し、同月発売の同誌の記事に
は、Y2組合の執行部が作成したY1の社員の個人情報を満載した内部資料を
入手したところ、同資料には「右翼、日教組、創価学会、バカ、ブス、おでぶ、
宇宙人、父なし子、流産、死産、精神病」といった問題と思われる記載がある
などと掲載されていた。
これを受けて、Y2組合は、客室乗務員に対して、不適切な情報収集や個人
情報保護法への不備な対応に関する謝罪文書を配布し、Y1も、社内調査を実
施し、個人情報保護法へ対応に一部不備があったことを認める文書を社員に配
布し、再発防止策を講じる旨の文書を労働組合に提示した。
本件は、Y1の客室乗務員及び元客室乗務員である原告193名(以下「X
ら」という。)が、Y2組合がY1と一体となってXらを含むY1の客室乗務
員の職場内外にわたるプライバシーに係る個人情報を収集してこれをデータ化
した本件ファイルを作成、保管、使用したことにより(以下、上記行為を一括
して「本件ファイル作成等」という。)、Xらのプライバシー権等が侵害され
たとして、Y1、Y2組合及び本件ファイル作成等にかかわったY2支部の元
役員Y3~Y7(以下「個人被告」という。)に対し、不法行為に基づく損害
賠償を求め提訴したものである。
【判決要旨】
東京地裁は、本件Xらの各情報がいずれもXらのプライバシー情報として法
的保護の対象となるとした上で、下記のとおり判示し、Y2組合及び個人被告
に対し、賠償金の支払いを命じた。(なお、Y1は、第1回口頭弁論において
請求を認諾し、請求金額を支払ったため、Y1に関する訴訟はすでに終了して
いた。)
1 プライバシーの侵害について
第三者に知られたくない個人に関する情報(以下「プライバシー情報」と
いう。)が一般人の感受性を基準にして人格的自律ないし私生活上の平穏を
害する態様で収集、保管又は使用された場合には、そのプライバシー情報の
収集、保管又は使用はプライバシーを侵害する違法なものというべきである。
2 本件におけるプライバシー侵害の有無について
ア 本人の同意のない情報の収集、保管及び使用について
Xらの各情報のうちY1からY2組合に対して公式に提供された情報及
び個人被告らの印象等以外に係る情報収集行為については、いずれもXら
の個人に関する情報を、Xらの同意なく、かつ、正当な目的なく収集した
ものであると認められるから、一般人の感受性を基準にして人格的自律な
いし私生活上の平穏を害する情報収集行為に当たるものであって、Xらの
プライバシーを侵害する違法なものというべきである。
また、それらの情報については、Y2組合内における保管及び使用につ
いても、Xらの同意があったことを認め得る証拠はなく、Y2組合がこれ
を組合内で保管したことや、これを使用すること自体、Xらのプライバシ
ーを侵害する行為に当たるというべきである。
イ 本人の同意又は推定的同意のある情報の収集、保管及び使用について
Y1からY2組合を含む社内各労働組合に公式に提供されていた社員の
フルネームリスト、休職者リスト等、また、Y2組合だけが公式に提供さ
れていた組合団体保険加入者リストについては、Xらの上記各情報を収集、
保管することについて、同意の存在が推定される事情があると認めるのが
相当であるが、これらについても、Y2組合内での保管、使用にとどまら
ない場合には、当該情報に係るXらのプライバシーを侵害する行為に当た
るというべきであるところ、Y2組合の組合員5名が実際に本件ファイル
を閲覧し、また当該情報の一部は、Y2組合の組合員であれば誰でも見る
ことができる状態でY2支部共用パソコンに保存され、利用に供されてお
り、その持ち出し、流出を防止するための対応措置がなされていないこと
から、Xらのプライバシーを侵害するものというべきである。
以上によれば、Y2組合による本件ファイル作成等は、プライバシー情報に
当たるXらの各情報を、一般人の感受性を基準として人格的自律ないし私生活
上の平穏を害する態様で収集、保管又は使用したものであり、その全体が一連
の行為としてXらのプライバシーを侵害する不法行為に該当するというべきで
ある。
また、個人被告らは、Y2組合による本件ファイル作成等の実行行為者に当
たり、それぞれの本件ファイル作成等にかかわった行為自体も、Xらに対する
不法行為を構成するというべきである。
※ 本件は確定した。
◆参考文献 労働判例2011. 3.15(No.1017)15~36頁 |
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【 編集後記 】
昨年は東日本大震災により、福島県はもとより広く東日本全体、さらには日
本全国で大きな被害を受けました。
復興までの道のりは長く険しい状況ですが、今年は辰年ですので、昇り龍の
ように元気を出して行きましょう。
今年も当メルマガをご愛読のほどよろしくお願い申し上げます。
〔オン&オフ〕
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| ◆☆ 次号発行日は、2月10日(金)となります。 |
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