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業務報告書・ディスクロージャー誌におけるリスク管理債権について 
 
 
 1 リスク管理債権とは
 
 リスク管理債権とは、農協法第54条の3第1項の規定により信用事業を行う組合がディスクロージャー誌に記載すべき事項として定められているもので、下記の4種類の貸出金をいいます。これは、預貯金者に対する金融機関の適正な情報開示が強く求められている中で、預貯金者が金融機関の経営の健全性を判断するための重要な指標の一つとなっています。なお、リスク管理債権の状況は、業務報告書にも記載することになっています。
 リスク管理債権の定義は、農協法施行規則第204条第1項第1号ホ(2)に規定があり、さらに「系統金融機関向けの総合的な監督指針」及び「系統金融検査マニュアル別冊[農林漁業者・中小企業融資編]」に留意事項が記載されています。これらの内容をまとめると概ね次のとおりになります。なお、銀行の場合は、銀行法第21条第1項および銀行法施行規則第19条の2第1項第5号ロに、信用金庫の場合は、信用金庫法第89条で準用する銀行法第21条第1項および信用金庫法施行規則第132条の2第1項第5号ロに、同様の規定があり、金融機関が共通の基準に基づいて開示すべき指標となっています。
 
@ 破たん先債権
 元本または利息の支払の遅延が相当期間継続していることその他の事由により元本または利息の取立てまたは弁済の見込みがないものとして未収利息を計上しなかった貸出金(未収利息不計上貸出金)のうち、法人税法施行令第96条第1項第3号のイからホまでに掲げる事由または同項第4号に規定する事由が生じているものに該当する貸出金をいいます。
 法人税法施行令に定める事由は、次のものです。
ア 会社更生法または金融機関等の更生手続の特例に関する法律の規定による更生手続開始の申立て
イ 民事再生法の規定による再生手続開始の申立て
ウ 破産法の規定による破産手続開始の申立て
エ 商法の規定による整理開始または特別清算開始の申立て
オ 手形交換所(手形交換所のない地域にあっては、その地域において手形交換業務を行う銀行団を含む)による取引停止処分
カ 農協がその事業年度終了の時において有する外国の政府、中央銀行または地方公共団体に対する個別評価金銭債権につき、これらの者の長期にわたる債務の履行遅滞によりその経済的な価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められる事由が生じている場合
 未収利息不計上貸出金については、「金融機関の未収利息の取扱いについて」(昭和41年国税長官通達)に基づき未収利息を益金に算入しなかった場合等をいいます。
 
A 延滞債権
 未収利息不計上貸出金であって、破綻先債権および債務者の経営再建または支援を図ることを目的として利息の支払を猶予したもの以外のものに該当する貸出金をいいます。
 ここで、債務者の経営再建または支援を図ることを目的として利息の支払を猶予したものとは、金利棚上げにより未収利息を不計上とした貸出金を指し、これは貸出条件緩和債権に該当します。
 延滞債権に金利減免が含まれるかどうかについては、金利減免後の利息回収状況により判断するものとし、金利減免後の未収利息について収益不計上とした場合には、延滞債権に該当します。
 
B 3カ月以上延滞債権
 元本または利息の支払が約定支払日の翌日から3月以上遅延している貸出金(破綻先債権および延滞債権に該当するものを除く)に該当する貸出金をいいます。
 
C 貸出条件緩和債権
 債務者の経営再建または支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる取決めを行った貸出金(破綻先債権、延滞債権および3カ月以上延滞債権に該当するものを除く)に該当する貸出金をいいます。
 ここで、債務者の経営再建または支援を図る目的の有無については、単に融資形態のみをもって判断するのではなく、債務者の状況や資金の性格等を総合的に勘案して判断する必要があります。例えば、書換えが継続している手形貸付であっても、いわゆる正常運転資金については、そもそも債務者の支援を目的として期限の延長ではないことから、貸出条件緩和債権には該当しません。
 なお、債務者に有利な取決めとは、債権者と債務者の合意によるものか法律や判決によるものであるかを問いません。
 貸出条件緩和債権の具体的な事例としては次のような債権またはその組合せが挙げられますが、これらにかかわらず上記の定義に合致する貸出金は、貸出条件緩和債権となります。
ア 金利減免債権
 約定条件改定時において、その債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用される新規貸出金利(基準金利)を下回る水準まで当初約定期間中の金利を引き下げた貸出金
イ 金利支払猶予債権
 金利の支払を猶予した債権
ウ 経営支援先に対する債権
 債権放棄などの支援を実施し、今後も再建計画の実施に際し必要となる支援の決定を行う方針を固めている債務者に対する貸出金
エ 元本返済猶予債権
 約定条件改定時において、基準金利を下回る金利で元本の支払を猶予した貸出金。これは、その債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用される新規貸出実効金利を下回る金利で元本返済の猶予が行われる場合には、債務者に有利となる取決めに該当し、貸出条件緩和債権となるというものです。
オ 一部債権放棄を実施した債権
 私的整理における関係者の合意や会社更生、民事再生手続における認可決定等に伴い、元本の一部または利息債権の放棄を行った貸出金の残額
カ 代物弁済を受けた債権
 債務の一部弁済として、不動産や売掛金などの資産を債務者が債権者に引き渡した貸出金(担保権の行使による引渡しを含む)の残額
キ 債務者の株式を受け入れた債権
 債務の一部弁済として、債務者の発行した株式を受領した貸出金の残額。ただし、当初の約定に基づき貸出金を債務者の発行した株式に転換した場合を除きます。
 以上、アからキの事例に係る判定に当たっては、次の点に留意してください。
a 基準金利は経済合理性に従って設定されるべきであること。基準金利は、通常、<調達金利+経費率+損失率+目標収益率>で表されます。
b 個別債務者に関し、金利以外の手数料、配当等の収入、担保・保証等による信用リスクの減少、競争上の観点等の当該債務者に対する取引の総合的な採算を勘案して、その貸出金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されているか否かを判定してください。これは、返済期限の延長が行われた場合であっても、条件緩和後の債務者に対する基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されているならば元本返済猶予債権に該当しないというものです。
 なお、この場合には、農林漁業者および中小・零細企業の特性を踏まえて、次のような点に留意して検討する必要があります。
・ 代表者等がその農林漁業者や企業等の保証人となっておらず、かつ個人資産を担保提供していない場合であっても、代表者等のその農林漁業者や企業等に対する支援の意思が確認されている場合には、その代表者等の資産について返済能力に加味することができることを踏まえて信用リスクを勘案します。
・ 条件変更を実施している債権であっても、その農林漁業者や企業が有する資産の売却等の見通しが確実であり、それにより返済財源が確保されている場合等には、信用リスクそのものが軽減されていることを勘案します。
 また、担保(優良担保、一般担保を問いません)や農業信用基金協会などの保証(優良保証、一般保証を問いません)等により貸出金が保全されている場合には、その保全状況を踏まえて信用リスクを勘案します(100%保全されており、信用リスクは極めて低いと考えられる場合には、調達コスト(資金調達コスト+経費コスト)を下回る場合を除いて、原則として、貸出条件緩和債権に該当しないものと判断して差し支えないものと考えられます)。
 
 過去において債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として金利減免、金利支払猶予、債権放棄、元本返済猶予、代物弁済や株式の受領等を行った債務者に対する貸出金であっても、その債務者の経営状況が改善し信用リスクが減少した結果、その貸出金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていると見込まれる場合には、その貸出金は貸出条件緩和債権には該当しません。これを「卒業基準」といいます。
 特に、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されている場合には、その経営再建計画に基づく貸出金は貸出条件緩和債権には該当しません。この場合は、次の点に留意してください。
ア 「実現可能性の高い」とは、以下の要件をすべて満たす計画であることをいいます。
a 計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること
b 計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと
c 計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること
イ 「抜本的な」とは、以下の要件をいずれも満たす計画であることをいいます。
a 概ね3年(債務者企業の事業の特質を考慮した合理的な期間の延長を排除しません)後のその債務者の債務者区分が正常先となること
b 各金融機関ごとに、計画におけるその債務者に対する取引の総合的な採算を勘案すると、その貸出金に対して基準金利が適用される場合と同等の利回りが確保されていると見込まれること
ウ 株式会社産業再生機構が買取りを決定した債権に係る債務者についての事業再生計画については、その計画がアおよびイの要件を満たしていると認められる場合に限り、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」であると判断して差し支えありません。
エ 既存の計画に基づく経営再建がアおよびイの要件をすべて満たすこととなった場合も、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画に沿った金融支援の実施により経営再建が開始されている場合」と同様とします。
 制度資金である負債整理資金(農業経営負担軽減支援資金等)については、この基準に該当するものとして、貸出条件緩和債権に該当しないものと判断して差し支えありません。
 なお、ウの場合を含め、アおよびイの要件を当初すべて満たす計画であっても、その後、これらの要件を欠くこととなり、その計画に基づく貸出金に対して基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていないと見込まれるようになった場合には、その計画に基づく貸出金は貸出条件緩和債権に該当することとなるので、留意してください。
 また、農林漁業者や中小・零細企業等の特性を踏まえて、次のような点にも留意し、検討する必要があります。
ア 債務者が経営改善計画等を策定していない場合であっても、例えば、今後の資産売却予定、役員報酬や諸経費の削減予定、新商品等の開発計画等収支計画表等のほか、債務者の実態に即して組合が作成・分析した資料を踏まえ信用リスクを勘案します。
イ 株式会社整理回収機構および中小企業再生支援協議会が策定支援した事業再生計画についても、株式会社産業再生機構が買取りを決定した債権に係る債務者についての事業再生計画と、原則として同様に扱います。
ウ その進捗状況が概ね1年以上順調に進捗している場合には、その計画は実現可能性の高い計画であると判断して差し支えありません。
 
 資産の自己査定、リスク管理債権および金融再生法開示債権の関係を図にすると、概ね次のようになります。
自己査定、リスク管理債権、金融再生法開示債権の関係のイメージ
 
 
 2 判定方法
 
 リスク管理債権の判定方法は、概ね下図のようになりますが、貸出先単位で査定を行う資産の自己査定とは異なり、貸出口座単位で判断することに留意してください。
 
リスク管理債権判定のフロー図のイメージ
 
 
 3 間違いやすい事例
 
@ 破綻先債権の中に、法的に破綻していない債務者に対する債権を含めている。
 
 リスク管理債権における破綻先債権は、あくまで法的に破綻した債務者に対する債権であり、死亡者等に対する債権は含めません。
 ここでいう法的破綻とは、以下に掲げるものに限られますので注意してください。
ア 会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続開始の申立て
イ 民事再生法の規定による再生手続開始の申立て
ウ 破産法の規定による破産手続開始の申立て
エ 商法の規定による整理開始又は特別清算開始の申立て
オ 手形交換所(手形交換所のない地域にあっては、その地域において手形交換業務を行う銀行団を含む)による取引停止処分
カ 外国の政府、中央銀行又は地方公共団体に対する金銭債権のうち、これらの者の長期にわたる債務の履行遅滞によりその経済的な価値が著しく減少し、かつ、その弁済を受けることが著しく困難であると認められる事由が生じている場合
 
A 破綻先債権及び延滞債権に、未収利息を計上している債権を含めている。
 
 破綻先債権及び延滞債権は、未収利息不計上の貸出金に限られます。なお、破綻懸念先、実質破綻先に対する貸出金は、通常未収利息不計上であるため、貸出条件緩和債権を除くとすべて延滞債権となります。
 
B 貸出条件緩和債権について理解不足である。
 
 貸出条件緩和債権とは、金利の減免、元金優先弁済などによる金利の支払猶予、償還期間の延長・短期資金のころがしなどによる元本の返済猶予、債権の一部放棄などの方法で、経営の再建又は支援を図るために、債務者に有利となる取決めを行った貸出金をいいます。
 ここで、「債務者に有利な取決め」とは、組合と債務者との合意によるものか、法律や判決によるものかは問いません。
 なお、金利の減免及び元本の返済猶予の場合は、これらを基準金利を下回る金利で行った場合に限られます。「基準金利」とは、当該債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用される新規貸出金利をいいます。
 また、他行債務の負債整理をするための貸出金、購買未収金を証書化した貸出金などは、通常、そのことのみをもって貸出条件緩和債権に該当することはありません(融資実行時において元本返済猶予債権には当たらない、ということ)ので注意してください。
 さらに、未収利息不計上債権であっても、債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として利息の支払を猶予したもの、すなわち「金利棚上げにより未収利息を不計上とした貸出金」については、延滞債権ではなく、貸出条件緩和債権となります。
 
C リスク管理債権に未収利息を加えている。
 
 全資産を対象とする自己査定と異なり、リスク管理債権は貸出金元金のみを対象としていますので、ディスクロージャー誌・業務報告書に記載するのは、元金額のみであることに注意してください。
 
 
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