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農業協同組合について
 
 
目  次
 
 
 1 農業協同組合とは ▲ページのトップへ戻る
 
(1) 農業協同組合とは
 
 農業協同組合(農協)とは、農業者が、相互扶助を目的として、農業協同組合法(農協法)に基づき自主的に設立する協同組合で、法人格を有しています。小規模な事業者であり、経済的弱者といわれる農業者が、生産や消費活動の相互扶助・協同によって、その経済的社会的地位の向上を図ることを目的としています。
 この目的のために、農協は、営農指導、農産物の共同販売、生産資材や生活物資の共同購入、貯金の受入れ、資金の貸付け、共済事業、福祉事業など様々な事業を行っています。農協法第8条では、農協の事業の目的について、「組合は、その行う事業によつてその組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業をおこなつてはならない」と規定しています。
 農協が協同組合として持つ原則には、次のようなものが挙げられています。
ア 農民の自主的な結合体である
イ 勤労農民を主体とする組織である
ウ 農民によって運営される団体である
エ 協同事業を目的とする
オ 農業生産の協同化を図る
カ 農民の地位の向上を図る
キ 政治的中立の立場をとる
 
 現在では、「JA」(Japan Agricultural Co-operatives(日本の農業協同組合)の略)という愛称も使われています。
 
(2) 農業協同組合の種類
 
 農協には、大きく分けて「総合農協」と「専門農協」とがあります。
 「総合農協」とは、信用・共済・購買・販売など様々な事業を総合的におこなっている農協をいいます。
 「専門農協」とは、畜産、酪農、果樹、農村工業など特定の業種に限って、営農指導、共同販売、資材の共同購入などをおこなっている農協をいいます。貯金等の受入れをおこなっていない農協を専門農協という場合もあります。
 
(3) 農業協同組合法
 
 農業協同組合法(農協法)とは、農業協同組合、農業協同組合連合会、農事組合法人、農業協同組合中央会について、その組織、事業、運営等を規定している法律です。昭和22年11月19日に公布、同年12月15日に施行されました。
 この法律の目的は、「農業者の協同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もつて国民経済の発展に寄与すること」(第1条)とされています。
 農協法以前には、農業者の協同組織について規定する法律として、産業組合法(明治33年)、農業団体法(昭和18年)がありました。しかし、これらの法律に基づく組織は、協同組合原則に基づく協同組織としては不完全なものでした。そこで、戦後、協同組合原則に立脚した農業者のための協同組合を設立するために制定されたのが農協法です。
 
※ 協同組合原則=協同組合には、農業協同組合のほか、漁業協同組合、消費生活協同組合、事業協同組合などがありますが、これらに共通する原則として考えられているのが、協同組合原則です。その内容としては、相互扶助が目的、任意設立、加入・脱退の自由、組合員間の平等などが挙げられています。
 
 
 2 農業協同組合の事業 ▲ページのトップへ戻る
 
 農協は、様々な事業をおこなっていますが、農協法およびその他の法律によって認められた事業以外の事業を行うことはできません。
 
(1) 事業の種類
 
 農協がおこなっている事業には、次のようなものがあります。
 
@ 指導事業
 組合員の農業の経営と技術の向上、生活の改善に関する指導で、営農指導と生活指導に分けられます。指導員が各組合員宅を巡回したり、講習会を開いたりしています。
 
A 信用事業
 組合員からの貯金・定期積金の受入れ、資金の貸付け、為替取引、手形の割引、国債の販売などの金融・証券業務です。貯金・定期積金の受入れのことだけをいう場合もあります。
 現在、各農協は、農林中央金庫を中心に「JAバンクシステム」を構築し、信用事業の強化と安定を図っています。
 
B 共済事業
 組合員の死亡や災害などが起きたときに備えて、一定の掛金を集めておき、これらが発生した場合には共済金を支払うことで、組合員の事業や生活を安定させようとする事業です。生命保険や損害保険と同じような役割を果たしています。
 
C 購買事業
 組合員の事業または生活に必要な物資を共同で購入し、供給する事業です。単に安く供給するだけではなく、質の高いものを供給することも目的としています。
 
D 販売事業
 組合員が生産する農産物を共同で販売し、農産物の価格・供給の安定化を図る事業です。農産物の運搬、加工、貯蔵などもおこなっています。
 
E 利用事業
 組合員の事業や生活に必要な施設を共同で設置する事業です。組合員の事業に必要な施設としては、大型トラクター、コンバイン、ライスセンター、カントリーエレベーター、農業倉庫、共同選果場、農機具修理工場などがあります。生活に必要な施設としては、集会場、購買店舗、有線放送施設、冠婚葬祭施設、ガソリンスタンドなどがあります。
 
F 加工事業
 組合員が生産した農作物を利用して、ハム、ソーセージ、チーズ、みそ、醤油、漬け物などを製造・販売する事業です。
 
G 福祉事業
 老人ホームの設置、デイサービス、ホームヘルパーの派遣、介護用品の貸与などの事業で、介護保険事業者として事業をおこなっている農協もあります。
 
H 厚生事業
 病院や診療所を設置したり、健康診断や保健指導をおこなったりする事業です。多くの場合は、各農協が行うのではなく、連合会(厚生連)で行っています。
 
I 農業経営の受託事業
 組合員の委託を受けて農業の経営を行う事業です。農作業の受託だけでなく、農業の経営そのものを受託することもできます。
 
J 農業の経営
 農協は、一定の場合に、自ら農業の経営を行うことができます。
 
K 団体協約の締結
 組合員が業者と取引を行う場合に、農協が代わって取引条件の交渉などを行うものです。
 
 
(2) 員外利用
 
 農協の事業は、組合員だけが利用できるのが原則です。しかし、農協法および定款の定めにより、一定の割合で組合員でない者も事業を利用することができます。これを員外利用といいます。
 員外利用が認められている理由は、農協が農村における主要な経済機関となっていることと、農協の経営の安定のためには、組合員以外の者の利用を可能とすることが適当であるためです。
 
 
 3 農業協同組合の組合員 ▲ページのトップへ戻る
 
 農協は農業者のための組織ですから、その組合員は農民であるのが原則です。農民である組合員を一般に「正組合員」といいます。しかし、農民でなくともその事業を利用することが適当な場合がありますので、このような者も「准組合員」として組合員になることができます。
※ 「農民」とは、みずから農業を営み、または農業に従事する個人をいいます。農民と小規模な農業法人を合わせて「農業者」といいます。
 
(1) 組合員資格
 
 農協の組合員資格を持つのは、次の者のうち定款に定める者です。
 
@ 正組合員
ア 農業者
 
A 准組合員
ア その農協の地区内に住所がある個人
イ その農協から物資の供給または役務の提供を継続して受けている者で、その農協の事業を利用することが適当な者
ウ その農協の地区の全部または一部を地区とする農協
エ 農事組合法人など、その農協の地区内に住所がある農民が主な構成員となっている団体で、協同組織のもとに構成員の共同の利益を増進することを目的としているもの
オ その農協の地区内に住所がある農民が主な構成員または出資者となっている団体
 
(2) 加入
 
 定款に定められた組合員資格を持つ者は、誰でも、本人の自由な意思によって、いつでも、定款に定める手続によって組合員の加入の申込みをすることができます。農協は、正当な理由がないのに、加入を拒んだり、現在の組合員が加入した時より困難な条件を付けることはできません。
 
(3) 脱退
 
 組合員は、その意思により自由に農協を脱退することができます。脱退に農協の承認はいりません。出資組合の場合は、その持分の全部の譲渡によっていつでも脱退することが出来ます。持分の譲渡を受ける者がいないときは、農協に対して定款の定めるところにより持分を譲り受けることを請求することができます。非出資組合の場合は、60日前までに予告することが必要で、事業年度末に脱退することになります。
 組合員が自ら脱退する場合のほか、組合員資格を失ったとき、死亡(団体の場合は解散)したとき、除名されたときにも脱退します。
 
(4) 組合員の権利
 
 組合員は、農協に対して様々な権利を持っています。このうち、組合自体の目的を達成するために組合員に与えられるもので、組合員が農協の構成員として農協の運営に参加するための権利を「共益権」といい、組合員自身の目的を達成するために組合員に与えられるもので、組合員が農協の構成員として農協から経済的利益を受けるための権利を「自益権」といいます。これらの権利には、正組合員のみが持つものと、正組合員と准組合員の両方が持つものとがあります。また、その権利を行使するためには一定数以上の他の組合員の同意が必要なものもあります。
 
@ 共益権
ア 総会における議決権(正組合員のみ)
イ 役員および総代の選挙権(正組合員のみ)
ウ 役員の被選挙権(被選任権)
エ 総代の被選挙権(正組合員のみ)
オ 総会招集請求権(正組合員のみ)
カ 役員改選(解任)請求権(正組合員のみ)
キ 参事または会計主任の解任請求権(正組合員のみ)
ク 総会(総代会)の決議、選挙または当選の取消請求権
ケ 総会(総代会)の決議の取消の訴えを提起する権利
コ 総会(総代会)の決議の無効または不存在の確認の訴えを提起する権利
サ 設立の無効の訴えを提起する権利
シ 出資1口金額の減少の無効の訴えを提起する権利
ス 合併の無効の訴えを提起する権利
セ 定款、規約、諸規程、総会・理事会議事録、組合員名簿、財務諸表などの閲覧または謄写を求める権利
ソ 組合員代表訴訟を提起する権利
タ 理事の違法行為の差止請求権
チ 農協の検査請求権
ツ 行政庁による一時理事の選任または総会の招集を請求する権利
 
A 自益権
ア 農協の事業を利用する権利
イ 剰余金配当請求権(出資組合のみ)
ウ 持分払戻請求権(出資組合のみ)
 
(5) 組合員の義務
 
 組合員が、組合員として農協に対し負担する義務には、次のようなものがあります。
ア 組合の内部秩序の維持の義務
イ 出資の払込義務(出資組合のみ)
ウ 損失の払込義務(定款に定めがある場合のみ)
エ 賦課金の払込義務(定款に定めがある場合のみ)
 
 
 4 農業協同組合の組織 ▲ページのトップへ戻る
 
(1) 総会・総代会
 
 総会とは、正組合員によって構成される農協の最高の意思決定機関です。総会は1年に1回定期的に開かなければならず、これを「通常総会」といいます。必要があるときは、「臨時総会」を開くこともできます。
 総会における各組合員の議決権は、出資口数にかかわらず平等です。総会の議決方法には、「普通議決」と「特別議決」とがあります。普通議決は、出席者の過半数で決する方法です。特別議決は、農協の定款の変更・解散・合併など重要な事項について行われるもので、正組合員の半数以上が出席し、その3分の2以上の多数によって決する方法です。総会の議決は、定款の定めによって、書面または代理人により行うことができます(※)
※平成18年5月の法改正より、特別議決事項については、定款に定めれば議決要件を出席者半数以上及び議決3分の2以上の割合にすることができるようになりました。
 総代会とは、総会に代わって農協の意思決定をする機関で、正組合員が500人以上の農協が定款に定めることにより設置できます。総代は、正組合員によって選挙で選ばれます。総代の数は、正組合員の総数の5分の1以上(正組合員の数が2,500人を超える場合は500人以上)でなければなりません。総代会の権限は、農協の合併や解散の議決などを除いて、原則として総会と同じです。
 
(2) 理事会・理事
 
@ 理事会・理事とは
 理事会は、農協の業務執行を決定し、理事の職務の執行を監督する機関で、理事はその構成員です。理事の定数は5人以上で、選挙または総会で選任されることにより選ばれます。理事の定数の3分の2以上は、正組合員でなければなりません。また、信用事業を行う農協は、常勤の理事を3人以上置かなければならず、そのうち1人は信用事業を専門に担当しなければなりません。理事の任期は、3年以内で定款で定める期間です。
 理事のうち1人以上を代表理事として、理事会で選出しなければなりません。代表理事は、業務執行権を持ち、農協を対外的に代表します。
 理事が農協に対して負担する義務には、善管注意義務、忠実義務、競業避止義務があります。また、農協の常勤理事、信用事業を行う農協の代表理事は、兼職兼業が規制されています。
A 理事の責任
 理事と農協との関係は委任関係であり、民法の委任に関する規定が適用されます。民法では、受任者(理事)は「委任の本旨に従い善良なる管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」と規定しています。これが「善管注意義務」といわれるものです。
 この善管注意義務を前提として、農協法では、理事がその任務を怠り、農協に損害を与えた場合には、連帯して損害を賠償しなければならないと定めています。つまり、理事は、単に従来の慣行を踏襲しているだけでは足りず、法令を十分理解し、あらゆる事態を想定して、問題が起きないよう最善を尽くし、仮に問題が起きたときには適切に対処することが必要です。そうしないと、善管注意義務に違反したとして、損害賠償責任を負わなければならなくなることもあるということです。
 また、第三者に損害を与えた場合の責任として、農協法は、理事がその職務を行うにあたって悪意または重大な過失により第三者に損害を与えた場合には、連帯して損害賠償責任を負うと定めています。この第三者に対する責任には、理事の違法行為によって農協が破綻し、取引先に損害を与えた場合なども含まれます。
 理事の責任を追及する方法としては、農協みずからが理事を訴えるほか、組合員代表訴訟により行うこともできます。組合員代表訴訟は、6か月前から組合員である者が、農協に対して役員の責任を追及する訴えの提起を求めたにもかかわらず、農協が訴えを提起しない場合に、組合員自らが農協に代わって訴えを提起する制度です。農協と役員との特殊な関係から、農協自身が積極的に役員を訴えることが難しい実態があるために認められたものです。
 
(3) 経営管理委員会
 
 農協は、理事会の上位機関として経営管理委員会を設けることができます。経営管理委員会の定数は5人以上で、その4分の3以上は組合員でなければなりません。任期は理事と同じです。
 経営管理委員会は、農協の業務の基本方針、重要な財産の取得など、農協の業務執行に関する重要事項を決定します。経営管理委員会を置く農協の理事は、経営管理委員会で選任されます。そして理事会および代表理事は、経営管理委員会の決定した範囲内において日常の業務執行を行うことになります。
 
(4) 監事
 
 監事は、理事および経営管理委員の職務の執行を監査する機関です。監事の定数は2人以上で、任期は理事と同じです。貯金量が50億円以上の農協は、組合員以外の監事(員外監事)を置かなければならず、貯金量が500億円以上の農協は、常勤の監事を置かなければなりません。
 監事は、いつでも、理事や職員に対して、事業の報告を求め、農協の業務および財産の状況を調査することができます。そして、理事または経営管理委員は、農協に著しい損害をおよぼすおそれのある事実を発見したときは、ただちに監事に報告しなければならないこととされています。
 監事は、理事会に出席しなければならず、必要があるときは意見を述べなければなりません。このほか、監事には、総会提出議案の調査報告義務、理事の違法行為差止請求権、理事が不在の場合の総会招集権などがあり、農協の運営に非常に重要な役割を持っています。
 さらに、監事が故意または過失によってその任務を怠り、農協に損害を与えたときは、損害を賠償しなければなりません。悪意または重大な過失によって第三者に損害を与えた場合にも、損害賠償責任を負います。
 
 
 5 農業協同組合の財務 ▲ページのトップへ戻る
 
(1) 出資
 
 農協法では、その農協を出資組合とするか非出資組合とするかは、その農協の自由としています。しかし、農協が事業を実施し、健全な経営を行うためには自己資本が必要である場合が多く、実質的に出資組合が基本となっているため、農協法では出資に関して様々な規定をおいています。
 なお、信用事業や共済事業など、特に高い経営の健全性が求められる事業は、出資組合以外は行えないこととされています。
 出資に関する規定には、次のものがあります。
 
@ 出資組合の組合員は、出資1口以上を有しなければなりません。なお、全国中央会が定める模範定款例では、出資の払込みをしたときに組合員になると定めています。
A 出資1口の金額は、均一でなければなりません。これは、出資1口金額の異なる農協が合併する場合にも当てはまります。
B 出資組合の組合員の責任は、賦課金((3)参照)の負担のほか、その出資額を限度とします。つまり、組合員の責任はいわゆる有限責任であって、農協が債務超過となり破綻した場合であっても、組合員は出資額以上の責任を負わないということです。なお、非出資組合の組合員の責任も、賦課金の負担を除いて有限責任とされています。
C 組合員は、出資の払込みについて、相殺をもって農協に対抗することができません。ただし、組合員が農協に貯金がある場合に、この貯金を引き出して(振り替えて)出資の払込みをすることができることは、いうまでもありません。
D 組合員は、2人以上が共同して出資することはできません。
E 組合員は、定款に定めることにより、現物出資をすることができます。
F 出資組合は、1組合員の有することのできる出資口数の最高限度を定め、定款に記載しなければなりません。
G 出資の払込みは、一時払込みと分割払込みのいずれとすることも農協の自由です。ただし、現物出資者は、第1回目の払込みの期日に、出資の目的である財産の全部を農協に給付しなければなりません。なお、全国中央会が定める模範定款例では、全額一時払込みと定めています。
H 組合員は、定款で定めた1組合員の有することのできる出資口数の最高限度の範囲内において、いつでも自由に出資口数を増加させることができます。
I 組合員は、事業を休止したとき、事業の一部を廃止したとき、その他やむを得ない事由があると認められるときは、定款の定めるところにより、その出資口数を減少させることができます。全国中央会が定める模範定款例では、出資口数の減少は、やむを得ない理由があるときに、理事会の承認を得て行うことができると定めています。
J 出資1口金額を増加させる(例えば、1口3,000円だったものを1口5,000円とするような場合)ために定款を変更する場合には、組合員によっては新たな出資が必要となるため、有限責任の原則から、全組合員の同意が必要であるとされています。
K 出資1口金額を減少させる場合は、対外的には、農協の債権者の担保力を減少させることとなるため、債権者保護のための特別な手続をとらなければなりません。
L 信用事業を行う農協の出資の総額は、1億円(正組合員数が1,000人未満の農協および地理的条件の悪い農協については、1,000万円)以上でなければなりません。
 
(2) 持分
 
 持分には、出資組合の組合員たる法律上の地位(組合員権)と、出資組合の純財産に対して組合員が有する分け前(計算上の数額)の2つの意味があります。非出資組合には、持分の概念はありません。
 持分(計算上の数額)の算定に関して、農協法に規定はありませんが、一般に、改算式と加算式の2つの方法があります。
 出資組合の組合員は、脱退または出資口数の減少をしたときには、定款の定めるところにより、その持分(計算上の数額)の全部または一部の払戻しを請求することができます。この払戻請求権の時効は、2年間です。全国中央会の定める模範定款例では、組合員の脱退または出資口数の減少の際に払い戻す持分の額は、組合員のその農協に対する出資額(その年度末時点の貸借対照表に計上された資産の総額から負債の総額を控除した額が出資の総額に満たないときは、その出資額からその満たない額を各組合員の出資額に応じて減算した額)を限度とすると定めています。
 組合員は、農協の承認を得なければ、その持分(組合員権)を譲渡することができません。持分の譲受人は、その持分について、譲渡人の権利義務を承継します。したがって、組合員資格のない者に持分を譲渡することはできません。
 組合員は、持分(組合員権)を共有することができません。
 出資組合は、質権の目的として組合員の持分を受けることができません。つまり、持分払戻請求権を担保として組合員に資金を貸し付けることはできません。
 
(3) 経費の賦課
 
 農協は、定款の定めるところにより、組合員に経費を賦課することができます。これを「賦課金」といいます。この経費の賦課は、出資組合、非出資組合のいずれもすることができます。
 どのような事業に要する経費について賦課をすることができるかについて、農協法に定めはありませんが、信用、共済、販売、購買などのいわゆる経済事業のために経費を賦課することは妥当でないと考えられており、通常は、指導事業などに限って賦課されています。また、農協の損失を補てんするための経費の賦課は、組合員の有限責任の原則から、できないとされています。
 
(4) 決算書類の作成
 
 農協の理事は、毎事業年度ごとに決算書類を作成し、理事会および経営管理委員会の承認を受け、通常総会に提出してその議決を経なければなりません。
 作成する決算書類は、出資組合にあっては事業報告書、貸借対照表、損益計算書、剰余金処分案または損失処理案および附属明細書、非出資組合にあっては事業報告書および財産目録です。
 これらの書類については、監事の監査を受けなければなりません。信用事業を行う農協で、貯金量が200億円以上の農協(特定組合)は、監事の監査のほかに中央会の監査も受けなければなりません。この中央会の監査を受けた場合で、監事と中央会の適正意見があったときは、貸借対照表と損益計算書については、通常総会の承認を得る必要がありません。ただし、通常総会でその内容を報告しなければなりません。
 理事は、通常総会の2週間前から、決算書類と監事および中央会の監査報告書を5年間主たる事務所に、その謄本を3年間従たる事務所に備え置かなければなりません。そして、組合員および組合の債権者は、これらの書類の閲覧または謄写を求めることができます。
 農協の帳簿その他の書類については、商法の商業帳簿に関する規定が準用されており、一般に公正妥当と認められる原則ないし基準に従って作成されなければなりません。つまり、農協には基本的に企業会計原則が適用されるので、税効果会計、連結会計、退職給付会計、金融商品会計などが適用されます。また、決算書類の記載事項と記載方法は、省令(農業協同組合法施行規則)で定められています。
 農協は、以上のほか、業務報告書および連結業務報告書を作成して行政庁に提出しなければなりません。また、信用事業または共済事業を行う農協は、業務および財産の状況に関する事項を記載した説明書類(ディスクロージャー誌)を作成して、事務所に備え置かなければなりません。このディスクロージャー誌は、組合員に限らず誰でも閲覧することができます。これらの書類に記載する内容は、省令(農業協同組合法施行規則)で定められています。
 
(5) 剰余金の処分
 
@ 法定準備金
 出資組合は、定款で定める額に達するまで、毎事業年度の剰余金の10分の1(信用事業または共済事業を行う農協は5分の1)以上を利益準備金として積み立てなければなりません。そして、定款で定める利益準備金の額は、出資総額の2分の1以上でなければなりません。この利益準備金は、損失のてん補に充てる場合を除いて取り崩すことができません。利益準備金と、出資1口金額の減少や合併の際に積み立てることとされている資本準備金を合わせて、法定準備金といいます。
 
A 教育事業資金
 出資組合は、農協法第10条第1項第1号(営農指導)および第13号(農村の生活文化の改善)の事業の費用に充てるため、毎事業年度の剰余金の20分の1以上を翌事業年度に繰り越さなければなりません。これを、教育事業資金または教育情報繰越金といいます。
 
B 剰余金の配当
 農協は、会社と異なり、営利(剰余金の獲得)を目的とするものではありません。したがって、その剰余金は、本来組合員が農協の事業を利用するのに応じて組合員に帰属すべきものが農協に留保されたものに過ぎないと考えられています。そのため、農協法では、剰余金の配当について、会社などとは異なった規制をしています。なお、非出資組合については、剰余金の配当に関する規定がありません。
 まず、出資組合の剰余金の配当は、事業年度終了の日における純資産(資産−負債)の額から、出資総額、法定準備金、教育事業資金などを控除した額を限度として行うことができます。そして、この剰余金の配当は、定款で定めるところにより、組合員の出資組合の事業の利用分量の割合に応じて(利用分量配当)、または年7分以内で払込済みの出資の額に応じて(出資配当)しなければなりません。
 なお、利用分量配当に相当する金額については、その農協には租税を課さないこととされています。これは、利用分量配当がいわゆる価格修正の意味を持つためです。
 
(6) 財務処理の基準
 
@ 固定比率
 出資組合の自己資本の額は、固定資産と外部出資(連合会、農林中金、農業信用基金協会を除く)の合計額以上でなければなりません。
 ここで、自己資本の額からは営業権相当額と当期剰余金のうち外部流出予定額を控除し、固定資産からは固定資産取得長期借入金、土地再評価差額金相当額、営業権の額を控除します。
固定比率のイメージ
 
A 内部運用比率
 信用事業を行う農協の、信用事業に係る経理の信用事業以外の事業に係る経理への資金の運用(他部門運用額)は、その農協の自己資本の額を超えてはなりません。
 ここで、他部門運用額とは、
信用事業負債(諸引当金を除く)−信用事業資産等(貸倒引当金控除前の信用事業資産の額に、信用事業を行う連合会、農林中金および農業信用基金協会への出資金の額を加算したもの)
をいいます。
 自己資本の額は、固定比率の自己資本の額と同じです。
 
B 貯払準備比率
 信用事業を行う農協は、貯金の払戻しおよび定期積金の給付に充てるために、貯金と定期積金の合計額の100分の20に相当する金額以上の金額を、次の資産をもって保有しなければなりません。
ア 信用事業を行う農協・連合会、農林中金、銀行、信用金庫、労働金庫、信用協同組合への預け金
イ 郵便貯金
ウ コールローン
 
C 余裕金運用の基準
 信用事業を行う農協の余裕金の運用は、財務の状況などが一定の基準を満たすとして行政庁の承認を得た農協(特定農業協同組合)を除いて、次のものに限られています。
ア 信用事業を行う農協・連合会、農林中金、銀行、信用金庫、労働金庫、信用協同組合への預け金
イ 郵便貯金
ウ 国債、地方債、政府保証債
エ 金融債
オ 特殊法人債
カ 銀行または信託会社への金銭信託
キ 公社債投資信託
ク 貸付信託の受益証券
ケ 金銭債権(譲渡性預貯金の証書、コマーシャル・ペーパー、住宅抵当証書、貸付債権信託の受益証書、抵当証券法第1条第1項に規定する抵当証券、特定債権等に係る事業の規制に関する法律第2条第4項第1号に規定する基本債権、同法同条第6項に規定する小口債券の証書に限る)
コ 短期社債
 実際には、各農協において、定款や余裕金運用規程などにより、その運用方法を制限しています。
 
D 区分経理
 信用事業または共済事業を行う農協は、これらの事業を他の事業に係る会計と区分して経理しなければなりません。
 
 
 6 農業協同組合の設立 ▲ページのトップへ戻る
 
 農協は、15人以上の農業者が発起人となり、設立に必要な手続を行った上で、行政庁の認可を受け、登記をすることで成立します。行政庁は、農協法に定める場合を除いて、認可をしなければならないこととされています。設立にいたる主な流れは、次のようになります。
 
発起人による目論見書(事業、地区、組合員資格)の作成

設立準備会の公告

設立準備会における定款作成委員の選任、基本事項の決定

創立総会の公告

創立総会における定款の承認、事業計画などの決定

行政庁に対する認可の申請

行政庁の認可

発起人から理事への事務の引き渡し

出資の第1回の払込み

主たる事務所の所在地における設立の登記
 
 
 7 農業協同組合の消滅 ▲ページのトップへ戻る
 
 農協が消滅するには、「解散」と「清算」の手続が必要です。
 「解散」とは、農協がその目的とする事業を停止し、その財産関係を整理する範囲内において、その整理が終了するまで存続できるだけの状態になることをいいます。したがって、解散しても農協はその法人格を失いません。
 「清算」とは、解散した農協がその財産関係を整理することをいいます。農協は、清算が終わり、清算結了の登記をしたときに法人格を失い、消滅します。清算に関する事務は、裁判所の所管となります。なお、農協が合併したときは、清算の手続を経ることなく消滅し、農協の権利義務は合併後の農協に引き継がれます。
 農協が解散する事由には、次のものがあります。
@ 総会(総代会)の議決(自主解散)
 この場合には、行政庁の認可が必要です。
A 合併
B 破産手続開始の決定
C 定款に定めた存立時期の満了
D 行政庁による解散命令
 
 
 8 農業協同組合に対する監督 ▲ページのトップへ戻る
 
 農協法では、行政庁(国および県)に対して、農協に対する様々な監督権限を与えています。
 農協は農民の自主的組織であることから、本来、その事業は組合員自らの意思によって決定、運営されるべきものであって、国家等の指示に基づいて行われるべきものではありません。したがって、農協に対する行政庁の監督は、厳格に制限されなければなりません。しかし、農協が農民の経済的社会的地位の向上を図ることを目的としており、その事業が公共的色彩の強いものであり、特に農民の利害に深く関係するところがあるので、その健全な発展を図るため、行政庁が指導監督していくことも必要です。農協法では、その必要な限度において、農協に対する行政庁の監督に関する規定を置いています。
 法令に定める、行政庁の農協に対する監督には、次のようなものがあります。
@ 認可
 設立、定款の変更、合併、解散の議決などには、行政庁の認可が必要です。ただし、一定の場合以外は認可をしなければならないこととされており、認可も不認可もしないときは認可したものとみなされるなど、行政庁の監督権限は制限されています。
A 承認
 信用事業、共済事業、農地信託事業、宅地等供給事業、農業経営事業を行う場合は、規程を定めて行政庁の承認を得ることが必要とされています。
B 報告徴収
 行政庁は、農協が法令等を守っているかを知るために必要な報告を徴収し、または農協の一般的状況に関する資料で特に必要なものの提出を命令することができます。
C 検査
 行政庁は、農協の業務または会計の状況を検査します。組合員は、一定の場合には農協の検査を請求することができます。また、信用事業を行う農協に対しては、毎年1回検査を行わなければならないこととされています。
D 特別監督命令(早期是正措置)
 行政庁は、信用事業または共済事業を行う農協に対し、その信用事業または共済事業の健全な運営を確保するために必要があると認めるときは、措置をとるべき事項および期間を定めて改善計画の提出を求め、または提出された改善計画の変更を命令することができます。
 また、行政庁は、信用事業または共済事業を行う農協に対し、その健全な運営を確保し、または組合員を保護するため、必要があると認めるときは、定款の変更、業務執行方法の変更、業務の停止などを命令することができます。
E 必要措置命令
 行政庁は、Bの報告徴収またはCの検査を行った場合において、その農協の業務または会計が法令等に違反すると認めるときは、期間を定めて必要な措置をとるべきことを命令することができます。
F 業務停止命令
 行政庁は、農協がEの命令に従わないときは、期間を定めて、業務の全部または一部の停止を命令することができます。
G 役員改選命令
 行政庁は、農協がEの命令に従わないときは、期間を定めて、役員の改選を命令することができます。
H 各種規程の承認の取消し
 行政庁は、農協が信用事業規程、共済規程などに定めた特に重要な事項に違反した場合において、Eの命令をしたにもかかわらずこれに従わないときは、規程の承認を取り消すことができます。
I 解散命令
 行政庁は、次の場合に農協の解散を命令することができます。
ア 農協が法律の規定に基づいて行うことができる事業以外の事業を行ったとき
イ 農協が、正当な理由がないのに、その成立の日から1年を経過しても事業を開始しないとき
ウ 農協が、正当な理由がないのに、1年以上事業を停止したとき
エ 農協が法令に違反した場合において、行政庁がEの命令をしたにもかかわらずこれに従わないとき
J 議決、選挙または当選の取消し
 組合員は、その総数の10分の1以上の同意を得て、総会の招集手続、議決の方法または選挙が、法令、行政庁の処分、定款または規約に違反することを理由として、その議決、選挙または当選の取消しを行政庁に請求することができます。
K 専属利用契約の取消し
 行政庁は、専属利用契約の内容が公益に違反すると認めるときは、その契約を取り消すことができます。
L その他
 以上のほか、農協法や省令、県の条例によって、総会の終了、役員の変更、不祥事の発生などの場合には、行政庁に届出をしなければならないこととされています。
 
 
 9 農業協同組合連合会とは ▲ページのトップへ戻る
 
 連合会とは、農協が組織する協同組合です。各農協単独では行うことが難しい事業や、農協同士協力しておこなった方が効率的であるような事業を行っています。これまでは、主に<農協−県連合会−全国連合会>の3段階で事業が行われていましたが、これを<農協−全国連合会>の2段階で行う体制に移りつつあります。
 連合会の会員資格を持つ者は、農協、連合会、農協法以外の法律により設立された協同組織体で農協と同種の事業を行う者、農協または連合会が主な構成員または出資者となっている法人です。農協または連合会を「正会員」、それ以外の会員を「准会員」といいます。
 連合会が行うことのできる事業は、原則として農協と同じです。
 連合会の組織についても、基本的には農協と同様です。ただし、農協と異なり、最低限必要な会員数は2人となっています。
 
 
 10 農業協同組合中央会とは ▲ページのトップへ戻る
 
 中央会とは、農協および連合会(以下「組合」といいます。)の健全な発達を目的とする団体です。全国中央会と都道府県中央会とがあります。
 中央会は、その目的を達成するために、次のような事業を行っています。
@ 組合の組織、事業および経営の指導
A 組合の監査
B 組合に関する教育および情報の提供
C 組合の連絡および組合に関する紛争の調停
D 組合に関する調査および研究
E 組合の模範定款例の作成
F そのほか、中央会の目的を達成するために必要な事業
 中央会は、組合を指導するために必要なときには、組合に対して、その組織、事業または経営の状況に関して報告または資料の提出を求めることができます。また、平成17年4月からは、全国中央会が中央会の行う組合の指導に関する共通の目標となる基本方針を総会で決定し、公表しなければならないなど、中央会の機能が強化されました。
 さらには、平成18年5月の法改正より、会社法における会計監査人と同様、全国中央会が農協に行う監査について任務を怠った時は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うことになりました。悪意または重大な過失によって第三者に損害を与えた場合にも同様です。また、組合員代表訴訟の対象になるなど、中央会の農協に対する役割と責任が一層大きくなっています。
 中央会の会員資格を持つ者は、組合、中央会、農林中央金庫、組合と同種の事業を行う法人で定款で定める者です。
 
 
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