第31回福島県川柳賞作品抄
入賞作品抄(抄出 審査委員・真弓明子)
★正賞「無縁社会そして絆」 横山昌利
戦後史を海のナマズが削除する
生かされて生きて地獄を見てしまう
妻や子がおう生きている泣いている
地球よりずっと重たい生命です
子ら去って無縁社会の中に座す
被災して隣りと太くする絆
色の無い街へ再起の種を蒔く
さなぶりに妻も徳利のふたつみつ
激震の大地へ杭を打ち直す
人も街も汚れたままで終われない
★準賞「風の向き」 高橋成子
ひまわりに希望を託す汚染地区
フクシマを優しく包む雨よ降れ
寄り添って地球の声に耳澄ます
トンネルの中で蛍を飼い慣らす
辛酸を舐めた舌だけ知る甘さ
★準賞「フクシマ」 山田茂夫
コンパスは無情フクシマ仕分けされ
無職にも一日があるカレンダー
はみ出した線は私の自己主張
還暦の妻へ二度目のプロポーズ
臥す妻の目線に活けた庭の花
★準賞「震災に生きる」 安田和楽志
千年の未曽有に生きる風卍
あんまりな神も仏も浚われる
街追われ流浪の民は眠れない
体験をしっかり生かす戦中派
いつの日かあの日に戻るうつくしま
★奨励賞「花いちもんめ」 宍戸とし子
ライバルは私の中に住む女
ちょっとだけ迷ってみよういろは坂
待ちわびた花の咲く日を消した海
一人では生きてゆけない人が好き
赤ちゃんのクシャミも家の花になる
★奨励賞「火の海」 斎藤和子
喪の海をつがい蛍が乱舞する
小石ひとつ遺骨代わりでありました
介護する抱かれたように抱きながら
昭和の釘ですがお役に立ちますか
風評に耐えた案山子の足洗う
★奨励賞「ひとり酒」 遠藤コウキ
正論を吐いて虚しい酒の味
笑う時泣く時おとこ酒が要る
少しだけ頭下げれば済んだのに
ペアルックときどき愛を確かめる
望郷へ母の煮しめとにごり酒
★青少年奨励賞「つぶやき」 薄井はあと
御年玉いただく時の恵比寿顔
節分や心の鬼と豆を食う
春なのに余震余震に明け暮れぬ
★青少年奨励賞「空の唄」 坂田莉菜
空っぽの心それでも笑えるね
空欄をうめられぬままの進路票
恋の唄空まで届けせみしぐれ
★青少年奨励賞「ゴールまで…」 小野寺拓哉
夏休み君に会えずにキックオフ
両想いいきのいいパス ワン・ツーで
友達のファールで散った僕の恋
★青少年奨励賞「草食系男子」 中嶋勇樹
体育祭夢では活躍してたのに
会話中僕は空気になりそうだ
気をつかい女子のパーにはグーを出す
★児童奨励賞「手」 今井瑚太郎
母の手をかぐと玉子のにおいする
手の平にぼくの人生書いている
★児童奨励賞「太陽」 熊田悠紀
スイカ割り夏の太陽割っている
太陽といっしょにおはようひまわりが
★児童奨励賞「四季の風景」 矢舘彩夏
弟とけんかするけど好きなんだ
ありがとうやさしい言葉笑顔だね
★児童奨励賞「なつやすみ」 小原奎人
むしとりのめいじんになるなつやすみ
じいちゃんのはたけのきゅうりちっくちく
★児童奨励賞「ぼくの夏」 若林謙
震災で父さん休み減っちゃった
早くこい家族旅行だぼくの夏