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診療所日記



 1.「テレビ老人」
 宮下病院では、月に一回ほど医師が公民館に出向いて地域住民の健康教室なるものをやっている。
 ある日のテーマは「メタボリックシンドロームについて」。メタボリックシンドロームではご存じのようにリンゴ型、洋なし型といった太り方での危険度も話題になるので話の中で実際のリンゴと洋なしを使ったせいだと思うのだが、公演後の質問の時間に、ある方から「リンゴはいつ食べるのがいいのか?」と質問された。さて、いつ食べるのがいいのでしょうか?

 「朝のリンゴは金」といった格言を聞いたこともあるが科学的裏付けをはっきり知らない。うむむと答えに詰まっていたら、次の質問者が「ヨーグルトはいつ食べたらいいのか?」別の質問者が「牛乳はいつ飲むのがいいのか?」とメタボリックシンドロームそっちのけで次々に食べ物の適正な摂取時間に興味を示すのである。「摂取時間よりも適量摂取が大事であろう。摂取時間についてははっきり断定できないですねえ」と言ったところ、

「そこを、みの(もん○)さんはしっかり答えてくれるのに」

と、失望されたようであった。後藤先生
 しかし本当に食べ物の摂取時間がそれほど大事なのであろうか???日本のように食べ物に恵まれていれば、あとは栄養バランスのいい食事をとって適度な運動をしていればリンゴを朝食べようが、夜食べようがあまり変わらないのではないだろうか。それともそう思っている私が少数派なのか?

 別のある日、外来診察中にある患者さんから、「左手を下にして寝ていたら起きたときに左手がしびれていたが脳梗塞なのではないか?」。聞けば、しびれは今朝からのもので起きてすぐに消失したとのこと。意識レベル正常、血圧、神経学的にも何ら問題はない。「正座したときに足がしびれるのと同じ原理だと思われる。」と説明したが心配そうである。結局この方は、知人から「テレビでしびれは脳卒中の前兆といっていた」と言われて心配していたのである。

 へき地の高齢者にとってテレビは限られた情報収集の窓である。そうした人たちがテレビで取り上げられた食品を購入しテレビでレクチャーされたように摂取することで、自らの健康に貢献し、かつ世間のムーブメントに乗っていると感じる楽しみ方も理解できないわけではない。テレビの健康情報と照らし合わせて自分の体の異常に早期に気づくことができた方もいるであろう。しかしああいった番組では視聴者に適切な情報を与えることよりも視聴者を引きつけておくことを優先して得てしてショッキングな映像で断定的なものになっている気がする。

 テレビっ子ならぬテレビ老人にはもう少し冷めたテレビの見方をしてほしいものである。

2007.4.19 福島県立宮下病院 医長 後藤直子